オンライン教室

オンライン教育とどのように向き合うべきか

新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、小学校や中学校が休校となり、教育がオンラインに急激に舵を切りつつあります。

塾や習い事の多くもオンライン化が避けられない情勢です

 

アルスクールもオンライン化の準備を早急に進めています。

また小学生の息子が3月からオンライン授業を受けており保護者としても体験しています。

この急激な変革のなか、保護者、ご家庭はどのようにオンライン教育と向き合っていけばいいのでしょうか

 

オンライン教育とは

まずオンライン教育とは、どういうものでしょうか。

大きく2種類に分けて考えましょう。

  1. オンラインレッスン
  2. アプリなどで自習するタイプのもの

1つ目のオンラインレッスンは、教室に集まる代わりに、ZoomやGoogle Meetなどのソフトウェアを用いてインターネット経由でレッスンを行う方法です。

先生がいて、リアルタイムで授業を行います。

 

もう1つは学習アプリを活用して、自習するタイプのもの。

スタディサプリやスマイルゼミなどが有名でしょうか。

 

この記事では、今までの学校に通う学びとの変化について、主に前者のオンラインレッスンについて考えていきます。

 

オンライン教育で拡がる教育格差

オンライン教育が広まるとどうなるでしょうか。

学校に行かなくてもレッスンが受けられ、子どもたちも楽しんで、意外とうまくいっているように見えます。

数々の利点があるオンラインレッスンですが、これが短期的でなく中長期間にわたり継続していくとどうなるか。

想定していなかったような教育格差が一気に拡がると思われます。

 

オンライン化する学校、しない学校

現状、オンラインレッスンを導入している学校はごく少数です。

さまざまな理由があるかと思いますが、学校休校中にオンライン化にすぐ対応する学校となかなか対応できない(あるいはしない)学校とでは、ご家庭次第とはいえ学習時間に大きな差が出ます

単純に学習時間の多少だけでなく、学習習慣や社会性の発育、保護者の皆様への負担などを考えても、その違いは大きいでしょう。
※ホームスクーリングなどに取り組まれていれば事情は異なると思います。

オンライン教育で伸びる子、伸びない子

オンラインレッスンでは、オンラインでみんなつながっていても、実際は自宅にいて周りに友達はいません。

ディスプレイの小さい画面で先生、友達の顔が見えるだけです。

 

アルスクールでもオンラインレッスンにチャレンジしています。

やってみると、熱心な子の集中力は教室のレッスンよりも高いことに気が付きます。

画面をよく見ないと授業の内容が分からない、周囲の雑音が少ないなど様々な理由があるとは思いますが、画面に没頭します。

またレッスンの進行も、レクチャーする時間、問題に取り組む時間などメリハリがつきます。

教材もそれぞれの子どもに最適化されるようなデジタル教材が、より使われるようになるでしょう。

 

このように、うまくいくと非常に効率的にレッスンができます

学習意欲が高く、自律して学習できる子どもには特に効果が大きいです。

 

一方で、教室での「みんなで学ぼう」という雰囲気は弱まります。

また、先生も画面からしか子供の様子をうかがい知ることができません。

直接会うよりも情報が格段に少ないです。

いざフォローが必要な子がいても、オンラインでは手段が限られます。

そして、学習意欲がなくなったときに、教室よりも非常に簡単に離脱できてしまいます

つまり、子どもによっては学習効率が非常に悪くなりますし、レッスン参加を中止しやすい環境といえます。

 

このように、子どもの状況によって(その状況は教える側の影響が大きいですが)今まで以上に、教育格差は大きくなると考えられます。

 

テクノロジーを使いこなそう

オンラインレッスンではPCやタブレットを用います。

テクノロジーが好きな子や好奇心の強い子は、喜んで操作するでしょう

積極的に新しい機能を試し、主体的にいろいろ調べて自信をつけ、一層レッスンが楽しく感じられます。

デバイス操作にストレスがない分、学習への集中力も高まります。

 

では逆に、テクノロジーに苦手意識を持っている子はどうでしょうか。

はじめてのオンラインレッスンで操作方法が分からなくて劣等感を持ったり、いろんな機能があっても怖くて触れずに使いこなせない。

分からなくても手助けを受けにくく、オンラインレッスンへの苦手意識が強くなります。

しいては、学習全体への苦手意識に繋がりかねません。

今まで教室で活発だった子、学校が好きだった子でも、この環境の変化についていけない可能性は十分にありえます。

 

子ども同士の関係性やリーダーシップを発揮する子も変わるでしょう。

敏感な時期の子どもには不安定な状態になることも考えられます。

 

オンライン教育に適した教科

オンラインレッスンにも向いているもの、そうでないものがあります。

オンラインレッスンは、知識を習得し伸ばす学習には非常に適しています

九九の習得、漢字の読みなど、公文式でやるような学習やドリル、選択式の問題集を解くような学びです。

特に、教室で黒板と教科書で教えるだけでなく、デジタル教材を用いるようになれば、よりよい環境になるでしょう。

なぜなら、他者と足並みを揃えるのではなく個々のペースで学習しやすいため、進みが早い子にも遅い子にもストレスなく学習できるからです

 

デジタル教材の進化は著しいです。

学習データを取得して、間違えた箇所や苦手な領域を重点的に学んだり、英語でも発音をAIで判定するなど、学ぶ意欲が高い子にとってはどんどん進めます。

 

一方で、学校は知識獲得だけを目的としているのではありません。

学ぶため、生きていくための土台を形成する教育が特に小学校では非常に大切です

学校生活を通じてコミュニケーションやコラボレーションを育みます。

自我を確立し自信をつけ、主体性や責任感を持ち、自己肯定感を獲得して忍耐強さを身に着けます

 

これら非認知能力と呼ばれるものは、オンライン学習でも習得できるでしょうか。

もちろん可能ですし、オンラインの方が伸びる子もいます。

でも、非常に難易度が高い。教室に集まって教師の五感を働かせても難しい学びです。

 

アルスクールでは、まず子どもと先生が信頼関係を築くことからはじめます。

信頼のあるコミュニティだから、チャレンジも失敗も思いっきりできるし、コラボレーションも起きる。

プログラミングスキルの優劣でなく、「自分のやりたいことをやっていいんだ」、「否定されないんだ」という場所。

自分のやりたいことに没頭できるからこそ、モチベーションが上がり、劇的な成長につながります

 

オンラインの場合にそれがどこまで築けるか。

どうやって築いていくのがいいのか。

オンラインの特徴は、良くも悪くも情報やコミュニケーションがデジタル化され単純化されることです。

データ解析など新しいアプローチが見つかる可能性も高いですが、現状では少ない情報量とコミュニケーション手段で解決策を試行錯誤していくことになると思います。

 

オンラインで伸びる子にするためには

知識よりも学びの土台を

では、オンライン学習で伸びる子にするにはどうしたらいいでしょうか。

オンライン学習は知識の習得には非常に適しています。

逆に言うと、知識は後からなんとでもなります。

 

それよりもまずは学びの土台、自律して学べる子どもになることを心がけてください。

与えられた課題をやるだけでなく、自分から積極的に学びを進めるような状態に持っていく

そうなればしめたもの。

今までよりも、むしろ成長するチャンスです。

では、この外出自粛の状況で、ご家庭で自律して学べるようにするにはどうしたらいいか考えてみましょう。

 

好きなことで自律学習のイメージを作ろう

計算や漢字書き取りばかりが学習ではありません。

やらされて勉強するのではなく、自分から進んで(自ら律して)学ぶようになることが大切です。

保護者のみなさまは勉強が大好きだったでしょうか?

勉強を進んでやるのはとても難しいことですよね。

自粛が続き、ストレスが溜まりがちなこの時期では特に、まずは好きなことでストレスなくペースを作りましょう

 

電車でもカードゲームでも塗り絵でも、好きなものを通じて「なぜだろう」とか「うまくいった!」と思えるような体験を積み重ねましょう。

その中で少し考えるヒントを出したり、達成感を共有していきましょう。

好きなもので自由研究をするイメージです。

やってみて考えてみる、まずはそこから。

温かく見守りましょう

 

一緒に考え一緒に挑戦しよう

「やってごらん」「何がやりたいの?」といっても大人でも戸惑ってしまいます。

特に、今は、学校と違い一緒に学ぶ子どもがいない(または兄弟のみの)人が多いでしょう。

「今日は何をやろうか」、「これも面白そうじゃない?」「パパ・ママもこれにチャレンジしよう!」など一緒に考えましょう。

小学校高学年や中学生の場合は、親よりもオンラインで同級生を巻き込むのが効果が高いかもしれません。(親の言うことを聞かなくなってくる年齢なので)

子どもは「教える人」よりも「一緒に学ぶ人」を求めています。

 

手出し口出しは我慢|学ぶチャンスを大切にしよう

子どもが知りたいこと、やりたいことがあったときに、すぐ答えを教えたり代わりにやるのではなく、一緒に調べたり、やり方を教えてあげましょう

「困ったときに答えを聞けばいい」ということを学ぶのではなく「こうやって調べればできるんだ」という体験こそが学びです。

うまくいかなくても、答えを間違えたってどうでもいいのです。

 

テクノロジーを楽しもう

オンライン化とITリテラシーは切り離せません。

PCやタブレットをYouTubeやゲームだけでなく、「学びに使えるんだ」、「色々できるんだ」と体感しましょう。

それには、現実とバーチャルをうまく繋げながら創作活動することがおすすめです。

例えば、次のようなものがあります。

  • ダンボールで工作をして写真撮影、iPadアプリで加工する
  • 動画を撮影しiMovieで編集し、家族や友達に発表して感想を言い合う

いろんなことができる」「でもできることは限られてる」「だから工夫したら面白い」という3つの感覚を持てるといいです。

また、PCやタブレット、あるいはZoomなどのツールを勉強にのみ使うと、デバイス=勉強と思ってしまうかもしれません。

苦手意識を持たないように、友達とオンラインで雑談するなどテクノロジーを楽しいことと結びつけるのもオススメです。

 

教育者視点からのオンライン教育

ここまでは保護者の視点で考えてきました。

一方で、教師の立場からオンライン教育を捉えるとどうなるでしょうか。思いつくままに書いてみます。

学ぶ力を身につけるのが大変(特に新しい子)

保護者の方でも書きましたが、知識の習得ではなく、学ぶ力をどう伸ばすか頭を悩ますと思います。

例えば、課題に取り組まない子を取り組むようにさせるのはすごく大変です。

小学校ならば上級生、あるいは担任が変わらない状態での導入などはそれほど難しくない一方、新1年生などの新しい子は特に難しいでしょう。

アルスクールも新入生をどのように受け入れるか、日々検討を進めています。

コミュニケーション手段の変化

Zoomなどのオンライン会議システムは、みんなの音声がひとつになってスピーカーから出てきます。

全員が同じ音声を聞きます。

隣同士の子の助け合いや会話が成り立たない。

発言もひとりずつ順番になります。

ソフトによっては小さいグループに分かれる機能やチャットなどもありますが、「隣のグループはこんなアイデア出してそうだよ」などのいい意味でのざわざわ感、カオス感が弱まります。

また目線にしても、カメラを向いているかどうかだけ。

どの子に向けて話しているかも分かりにくいです。

 

一方で、全員の顔がよく見えて、今まで拾えなかった表情の変化がよく分かりまし、URLなどはチャットでそのまま送ってしまえばいい。

録画などもしやすいし、黒板という概念もなくなり、ノートのとり方なども変わるでしょう。

それらの特性を考えて、コミュニケーション手段を再構築する必要があります

 

実体験を通じた学びができない

理科の実験がイメージしやすいと思いますが、「実際にやってみる」ことが非常に難しくなります。

これは大切な問題で、例えば算数の位取りでのタイル算などが疎かになったときに、どこかでつまずきやすくなるのではと懸念しています。

 

アルスクールでも、小2や小3の子どもにはパソコンの中だけでなく、レゴやマイクロビットという、動きが実際に見えるものと組み合わせることで、理解を深めてきていました

 

子どもは本質的に理解しないと、ただ暗記して先に進むことがあります。

それがむしろ思考を妨げるケースをたくさん見てきましたので、うまく解決していきたいです。

 

2ヶ月でオンラインに飽きる

本格的にオンライン学習に切り替えた学校でも、早い学校で3月から。

春休みもあったので実際は1ヶ月程度です。

子どもたちは物珍しさもあり、オンライン学習へのモチベーションが高い状態でスタートしていると感じます。

 

でもこれが続いていくとどうなるのか。

玩具のような楽しさは2ヶ月くらいで飽きがくる可能性があります。

プログラミングの教材でもそうです。

2ヶ月のうちに、玩具としての楽しさから、学ぶ面白さにモチベーションの源泉を転換していくのが大切で、この後、5月〜6月くらいでの子どもの様子がどう変わるか注視していきます。

 

保護者のサポート

オンラインレッスンの難しさとして、パソコンやタブレットの操作を伝えにくいことがあげられます。

言葉で説明してもなかなか伝わらないですし、どういう状態で困っているのか説明してもらうのも難しい。

プログラミング教室では特に、パソコンの操作(全角と半角切り替え、クリックする場所が違うなど)でつまづくことが多いです。

そのため、軌道に乗るまでは保護者の方に近くでサポートしてもらう環境が必要そうです。

今までの学校や習い事であれば、託児としての意味合いも少なからずあったため、保護者含めて適応が必要になると思います。

 

アルスクールでオンラインレッスンに強い子にしよう

アルスクールはプログラミング教室です。

基礎学習にも課題があるなかで、「プログラミング?」と思われるかもしれませんが、いま大切なのは、オンラインで自律的に学べるようにすることです。

プログラミングはゲーム制作などを通じて、子どもが楽しんで取り組めます。

オンライン学習の入り口としてはとても面白いと思います。

 

アルスクールでは、小学2年生~小学6年生向けにオンラインレッスンを行っています。

オンラインレッスンの内容・子ども達の反応については、こちらの記事をご覧ください。

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ABOUT ME
むらっち
村野智浩。探究型プログラミング教室アルスクール代表。探究学習などを学びながら、500名以上の子どもたちと学ぶ。チームラボでPM、スタートアップの技術顧問などを歴任のITスペシャリスト。東京大学工学部卒業。
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