「テトリスを作って」「シューティングゲームを作って」。
いま、AIにこう頼むだけで、本当に1〜2分で動くゲームができあがります。
それを見た保護者の方から、こんな質問をいただくことが増えました。
「AIで作れるなら、プログラミングを習う意味ってあるんですか?」
正直な答えは、「60秒でゲームが作れる、というのは本当です」。
AI・プログラミング教室アルスクールでは、プログラミング教材スクラッチや小学生も使える安全なAI教材を使って、レッスンをしています。
そのうえで、子どもたちを見てきた立場から、なぜAI時代の今でも、小学生がプログラミングを学ぶ意味があると考えているのかをお伝えします。
目次
AIでゲームが作れるのに、プログラミングを学ぶ意味はある?

AIに頼めば、動くゲームは出てきます。
ところが、教室で子どもたちを見ていると、その先で二通りに分かれます。
ひとつは、できあがったゲームを見て「できた!」で終わる子。
もうひとつは、「敵をもう1種類増やしたい」「ここで音を鳴らしたい」と、すぐに直し始める子です。
後者の子は、自分が「どうしたいか」を持っていて、それをAIに伝える言葉を持っています。
前者の子は、動くものが出てきた瞬間に、考えるのをやめてしまいます。
これはゲームづくりに限った話ではなく、AIで調べ物をするときにも同じことが起きています(この点は記事の最後で触れます)。
AIが答えを出してくれる時代に差がつくのは、「答えが出た後に、どこまで考え続けられるか」です。
そして、この力はプログラミングを学ぶ中で育ちます。
「作れる」と「作りたいものが作れる」は、別のことなのです。
プログラミングを学んだ子は、AIの使い方がうまくなる

AIにゲームを作ってもらうとき、プログラミングの経験がある子は、はっきりと指示が具体的です。
- 「敵が画面の端に来たら、向きを変えるようにして」
- 「スコアが10を超えたら、敵のスピードを上げて」
「もし〜なら」「〜のあいだ繰り返す」「スコアという数を覚えておく」。
プログラミング教材Scratchで何度も触ってきた考え方が、そのままAIへの言葉になります。
AIが書いたプログラムが思いどおりに動かなかったときも、「ちょっと聞き方を変えてみよう」とプログラミングでやってきたときと同じように試行錯誤します。
反対に、仕組みを知らないと、AIが出したものをそのまま受け取るしかなく、「なんか違う」と思っても直し方が分かりません。
中野校の小学3年生が作った「国旗クイズ図鑑」は、その過程がよく見える作品です。
最初は作りたいイメージを言葉にできず、AIの力を引き出せない時期が続きました。
それでも試行錯誤を重ねるうちに、「正解した国旗が図鑑にたまっていく」という仕組みを自分の言葉で伝えられるようになり、約200か国の国旗クイズとして完成させています。
AIを「作らせる道具」から「一緒に作る道具」に変えるのは、プログラミングの理解と、それを言葉にする経験です。
AI時代の小学生がつまずく2つの場面と、教室での対処

AIでゲームが作れるようになって、アルスクールでは新しいつまずき方も見えてきました。 どちらも、「AIが使える」だけでは越えられない壁です。
60秒で「できた」になり、考えるのをやめてしまう
先ほど書いた一つ目のパターンです。
こういう子に、白紙から「好きなものを作ろう」と言っても動きません。
そこでアルスクールでは、あえて直すところや改造するところが残っているテンプレートから始めてもらうことがあります。
「ここをこう変えたらどうなる?」というポイントが用意されていると、AIに頼む内容が具体的になり、「作って終わり」から「考えて直す」に切り替わっていきます。
いくつか作ると、「作りたいもの」がなくなる
もうひとつは、AIで何作品か作ったあとに「もう作りたいものがない」と言い出す子です。
AIは頼めば何でも出してくれるので、自分のアイデアを入れる余地がないまま作品が完成してしまう。
すると、作品に自分がいない感じがして、面白くなくなるのです。
この場合は、自分のアイデアを入れられる余地があるゲームの例を提示して、選んでもらいます。
たとえば釣りゲームなら、「魚はどんなふうに泳ぐ?」「何匹くらいいる?」「釣った魚はどこかに表示する?」。
アクションゲームなら、「2面になったら1面と何を変える?」「敵は何種類?」「アイテムは入れる?」。
問いが具体的になると、子どもは自分の答えを持ちます。
その答えをAIに伝え、形になり、また直す。
この往復こそが、AI時代のプログラミング学習の中身です。
小学生は、AIとプログラミングどちらから始める?

「AIで作れるなら、最初からAIでいいのでは?」と思われるかもしれません。
ただ、AIは「言葉で正確に伝える」道具です。
小学生のうちは、まだ自分のやりたいことを言葉にしきれない子が多く、Scratchのようにブロックを並べて動かす方が、作りたいものを実現しやすい場合もあります。
アルスクールでも、低学年はまずブロックから始める子が多数です。
一方で、ブロックの組み立ては苦手だけれど、言葉で説明するのがとても上手な子もいます。
そういう子は、ブロックとAIの両方を並行して使うと、どちらの力も伸びていきます。
大切なのは「ブロックかAIか」ではなく、その子に合った入り口から、自分の考えを形にする経験を積むことです。
小学生のプログラミングは、中学・高校の「情報」の学びにつながる

いま文部科学省では、次の学習指導要領に向けて、小学校に「情報の領域」、中学校に「情報・技術科」を設ける議論が進んでいます。
そこにはプログラミングも生成AIも、両方が入っています。
つまり国も、「AIがあるからプログラミングは不要」とは考えていません。
参照:文部科学省「教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ」
あわせて読む:小学校でAIを学ぶ?文科省が「情報教育」でいま検討していること
小学生のうちにScratchやAIでものを作った経験がある子は、中学・高校で情報を学ぶときに明らかに入りやすい。
パソコンの基本操作に慣れていることはもちろん、「ゲームやアプリは、こういう部品がこういう順番で動いてできている」という構造のイメージをすでに持っているからです。
教科書で初めて「変数」や「条件分岐」という言葉に出会うのと、自分のゲームで使ってきたものに名前がつくのとでは、理解の深さが変わります。
家庭でできること:子どもがAIで思考停止していないか確かめる

「AIで何かを作っている小学生」はまだ少ないと思いますが、「AIで調べている小学生」はたくさんいます。
Google検索の一番上に出てくるAIの要約を読んで、それで調べ物が終わる。
学校のパソコンやタブレットでも、家でも、ごく普通に起きていることです。
問題は、それが頭に残っているかどうか。
AIの要約は分かりやすいぶん、読んで分かった気になり、自分の頭をほとんど通っていないことがあります。
そこで、お子さんが何かを調べていたら、こう聞いてみてください。
「それ、画面を見ないで説明してみて」
自分の言葉である程度説明できれば、調べた意味があり、ちゃんと考えています。
ほとんど説明できなければ、AIの答えを眺めただけで、思考は止まっています。
そのときは「説明できるようになるまで読んでみて」と、使い方を教えてあげてみてください。
AIは答えを出してくれますが、その答えを自分のものにするかどうかは、使う側が決めることだからです。
これは、ゲームづくりでもまったく同じです。
AIが作ったゲームを見て「どこを変えたい?」と言える子と、調べたことを自分の言葉で説明できる子は、同じ力を使っています。
AIの出したものを受け取って終わるのではなく、自分の頭を通して、自分の考えを足す。
AIで何でも作れる、何でも調べられる時代に本当に必要なのは、作る技術や調べる速さではなく、この「自分の頭を通す」習慣です。
プログラミングは、その習慣を楽しみながら身につけられる、いちばん身近な道具だと私たちは考えています。
家庭でのAIの使わせ方については、こちらの記事でも詳しく書いています。











